ZOO

少年「なんかおかしいなぁ、」


動物園に動物を見に来たはずなのに
あのサルの奴もこっちを見てるんだもんな・・・。
これじゃぁどっちが何をしに来たのかわからなくなっちゃうよ。
あいつらは間違いなく檻や塀に囲まれて外へ出ることなんて
できないけど、そんなこといったら俺や周りの人間だって
会社や学校、義務や常識に囲まれてるしそれをあいつらは
見透かしてるんじゃないかなぁ・・・。


少年「あ、サルが笑った。」


やっぱり見てるんじゃないの・・・
人間ておかしいのかな、他の動物は本能に
素直に食べて寝て遊んで子孫繁栄させてるのに
自分で檻を作ってその中で仲間同士で貶めあったり
時には殺しあったり、頭が進化してるはずなのに
他の動物の方がよっぽど賢く生きてるじゃないか。


少年「やっぱそんな俺らの姿を見て笑ったのかな・・。」
サル「それは違うね。」
少年「!?」


サル「君が自分の中で考えていることを僕らに当てはめないで欲しい、
   僕らが君たち人間を馬鹿にしているように君が見えてしまうのは   

   君の中の考え方の問題なんだよ、

   僕らはそんな風に君らを見ていないよ」

少年「サルが喋った・・・・そんなばかな・・・・
   (これはきっと夢なんだな!よし夢なら・・・)
   じゃぁ1つ教えてくれよサル君!
   なんで君はさっき俺を笑ったのさ!」
サル「そこがまず違うんだよ人間君、僕は笑ってない。
   君には笑顔の様に見えたんだろうけど人間の笑うという
   表情がサルにとっても笑うを意味することだとは思わないで欲しいな。」

少年「・・・・・。」
サル「僕らは確かに安全だよ、檻や塀に囲まれていても食事は充分なくらい
  与えられているし雨風をしのげる家も用意されている。でもね、僕らには
  どこかに自由に出掛けたり、好きな相手を探して恋をしたり、自分の食べ
  たいものを食べることはできないんだよ。そんな不自由な僕らが君たちの
  ように好き勝手に生きることが出来る人間を笑うことなんてできないよ。」

少年「人間だって学校や会社や色んな檻にしばられてるんだよ、似たようなもんさ」
サル「学校っていかなきゃいけないの?会社って行かなきゃ行けないの?
  そこから抜け出すことは出来ないの?できるでしょ。」

少年「でも抜け出したら生きていけないよ・・・。」
サル「生きていくだけなら必要な物はそんなに多く無いよ。
  少なくとも週3日も働けば生きていくのには困らない、
  学校に行けなくても生きている人は世界には沢山いるよ
  君を一番縛っている檻の正体は君の決断や考え方そのものなんだよ。
  選ぶことが出来ない僕だからこそ良く解る、結局生きることを選んだり
  学校に行くことは君が選んでいるんだよ、そうじゃないなら止めれば
  いいだけだしね」

少年「そうなのかもしれないけど、よくわかんないよ・・・。
  でもいかなきゃいけない気はするし、でも行きたくも無いんだよ・・・。」
サル「それはわがままじゃないかなぁ・・・やりたいことがあるなら
  やればいいし、その決心がつかないなら止めれば良いんじゃないのかな
  誰かのせいにして誤魔化してまで続けるのは自分もイライラするだろう?」

少年「じゃぁ教えてくれよ!僕はどうしたらいいんだ!」
サル「また人任せにするのかぃ、君のしたいようにすればいいんだよ
  あ、そろそろ戻る時間だよ」

少年「えッ」


パシャ
少年「つ、冷た!」
水を顔にかけられて起きる少年。
父親「気がついたか○○。」
少年「父さん・・・僕は寝てたの?」
父親「なんか知らんがそのベンチで寝てたんだが声をかけても
  起きないから心配になってな、水かけてみた。」
少年「無茶するよ・・服ぬれちゃったし。
  なにか嫌な夢を見た気がするんだ、でもね嫌な夢なのに
  悪い気はあんまりしなかったんだ・・・。」
父親「ふぅん・・・。どんな夢だったんだ?」
少年「よく覚えてないや。」
父親「ん、そろそろ母さん達も待ってるし帰ろうか。」
少年「あ、待ってよ!」
二人は出口の方に駆け足で向かって行った。
その後ろ、サルの檻では一匹のサルが微笑んでいたとかいないとか。