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1章 現在の刑罰の状況と問題点

 


 まず始めに刑罰の目的とは何か、日本において刑罰の目的として有力に考えられているのはカントが主張した絶対的応報刑論をベースに、特別予防の重要性も考える相対的応報刑論による、刑罰の本質は究極的には応報(過去の行為に対する制裁)だが、同時に特別予防(再犯の防止)を追求できるものであるべきという主張である。この目的についても多くの議論があるのだが今回扱う問題はこの目的を踏まえつつ、その目的に合った刑罰が適当に執行されているのだろうかということである。現在日本では前出の刑罰の目的をふまえて、執行される刑罰の種類は七種類、死刑・懲役・禁固・罰金・拘留・科料・没収の七種類である。これらの刑罰の適応によって一般予防と特別予防の双方の目的を達成していると考えられている。しかし、現行の刑罰で本当に一般予防・特別予防効果ともに十分な効果が出ているのか、さらに被害者の救済など社会制裁の実際の効果などもふまえていくと、適当な責任をとったといえるのだろうか。現行の刑罰でも内容を見直す必要があるのではないか、また現行の刑罰の他にも新しい刑罰は必要なのではないだろうか、ということを考察していく。
 まず、刑罰の効果は主に一般予防と特別予防の二つの効果に分けることができる。一般予防とは国家によって保護されるべき法益に対する重大な侵害行為に対して相当な罰則を科して「わりに合わない」状況を作り、犯罪の意思を形成してもそれを実行に移すのを予防する効果のことである。そして特別予防とは犯罪を既に犯してしまった物が再び犯罪をしようという意思を形成しないように、考えを改めるように促す効果のことである。この二つの効果によって我々個人の保護はもとより社会の秩序の維持が保たれている。しかし、現行の刑罰形態の中での刑法犯の再犯率は35,6%である。1これは残りの64,4%の人は更生したともいえるわけだが、残りの35,6%は更生せずに過ちを繰り返している。これはもちろん現在の刑罰形態での一定の効果の裏付けとしての意味合いも多分に含みむが、同時に35%の人々が再び犯罪を犯しているといえる資料でもある。3割強の人が現行の刑罰形態で刑罰を受け、特別効果として十分に効果のあるとされる刑罰を受けたにもかかわらず、また過ちを繰り返しているからである。なぜこのような事態が起こるのかといえば、犯罪者が犯罪の意思を形成して実行に移してしまったことの本質的な解決を現行の刑罰では促せきれていないからだと私はおもう。本質的な解決とはある種の脅し的な手段ではなく、なんで実行に移す意思を形成してしまったのか等、個々人の理由に合わせて次は犯罪の意思をそもそも形成しないような状況を作り出すことである。これを求めていくことによって犯罪を犯してしまった人が犯罪を犯した原因がまったく消え去ることで再犯の可能性を下げると共に彼や彼女の今後の社会復帰にも多分に貢献することができる。だからこそ現行の刑罰が必ずしも間違いであるとは思わないが、時にはこの現行の刑罰ではカバーできない受刑者がいるのも確かだと思う。だからこそ現行の刑罰に敬意をはらいつつも内容の見直しや、新しい刑罰の可能性を考えていくことが重要なのである。
そしてもう1つ、現在の刑罰形態では被害者に対する加害者からの直接的救済は存在しない。加害者を社会制裁的に罰していくことも大切だが、同時に被害者を救済することも大切である。なぜなら加害者に被害者の受けた被害のその一端でも担がせて行くことこそ、加害者のしてしまった加害行為に対する責任の取り方としては正しいことであるからだ。それに守ることを保障された権利を侵害されて一番被害を被っているのは被害者であり、従来の社会的制裁による罰の効果は勿論大切であるが、被害者の被害の救済をさせることがひいては加害者の加害行動によって主に被害者周辺に不具合が生じている現状にたいする社会の適正化を促す作用があり、この中にも立派な社会制裁的作用があるように思う。加害者を罰したとしても被害者への保障ができていないと加害行為の起きた状況は変化せず、問題の解決にはならないからだ。もちろん死刑等の極刑も時には必要な手段となることもあるだろう。しかし、それよりも生きて被害者になんらかの救済活動をして、償いをさせて行く事のほうが多くの場合において加害者にも被害者にも適当な責任の取り方であり、罪の償いかたであるのではないだろうか。以上のことも含め、今後刑罰の内容と新しい刑罰の導入について考えていく。
 




↑がんばってる。